非計画購買のショッピング・モーメンタム 効果『流通情報』2025.11(No.577)に掲載

中村 博(博士:経営学,公益財団法人流通経済研究所 理事/中央大学大学院 戦略経営研究科 教授),杉本 ゆかり(博士:経営管理,立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科 特任教授)による寄稿論文「非計画購買のショッピング・モメンタム効果」が,『流通情報』2025.11(No.577)に掲載されましたのでご報告いたします.


要旨(Abstract)

本研究は、ショッピング・モーメンタム効果に着目し、計画購買と非計画購買の購買順序および連続的な購買行動のメカニズムを明らかにすることを目的とする。従来研究では、店内ディスプレイやプロモーションなど購買時点の要因に焦点が当てられてきたが、事前の購買がその後の購買に与える影響については十分に検討されていない。本研究では、事前購買がその後の非計画購買を誘発する過程を実証的に検討した。

首都圏のスーパーマーケットにおいて、30〜70代女性58名を対象に買い物調査とデプスインタビューを実施し、812商品の購買データを収集した。分析には被験者の異質性を考慮したポアソン回帰による一般化線形混合モデルを用い、購買タイプが購買順序に与える影響を検証した。

分析の結果、第一に、買い物客は来店後の動線前半で計画購買を行い、その後、動線の中盤から後半にかけて非計画購買が発生しやすいことが明らかになった。特に、サリエンス購買、参照価格購買、身体化認知購買は購買順序が後になりやすく、計画購買の達成が心理的ハードルを低下させ、非計画購買を誘発することが示唆された。

第二に、非計画購買はさらなる非計画購買を誘発することが確認された。とりわけ、想起購買は想起購買を、サリエンス購買はサリエンス購買を連続的に引き起こす傾向が見られ、非計画購買における逐次的強化が示された。

以上の結果から、計画購買されやすい商品は動線前半に、非計画購買を誘発しやすい商品やプロモーションは動線中盤から後半に配置することが、売場生産性および顧客満足の向上につながることが示唆された。本研究は、購買順序の視点から非計画購買のメカニズムを明らかにし、店舗レイアウトやマーチャンダイジングへの実務的示唆を提供するものである。